エナメル&パール ゴールドポケットウオッチ Eros & Psyche


200年前に作られた美しい時計が長い眠りから目覚めた。
先日パリで出会ったときは動かない状態で眠っていた。
そして、フランスから遠く離れた日本の時計職人によって蘇り
今、21世紀の日本の時を刻んでいる。
さぞこの時計も驚いていることでだろう。
この時計は19世紀の初めごろにフランスで作られたもので、それこそ機械はどこか頼りないカチカチという音を奏でている。よく聴くと少し不規則に チキチキ・・・カチカチ・・・チキチキ・・・・ どこかとても愛しくなってくる。

薄いブルーのエナメルがエンジンターンの模様の上に施されている。聡明な色鮮やかなブルー。
そして、その上に描かれているのは、エンジェルと蝶が木の枝のブランコで遊んでいる様子。(エロスとプシュケ)現代的な可愛らしさというより、なんとも素朴で愛らしい描かれ方をされているのがいい。

文字盤の部分もエナメルで作られていて、数字一つとっても、針を見ても、刻まれた小さなラインさえも趣が深い。
鍵を刺す穴は、どうしてこの位置にあるのだろう・・・。

両面の縁取りに施された小さなパールはよく見ると一つずつ違う容をしたいびつな物だ。
けれど不思議なくらい隙間なくぎっしりと埋め込まれていて、最終的にまとまった綺麗な円形のラインを描いている。規格通りのまったく同じものを並べていったものより、アンティークのこういった作りの方が味わい深く美しく思える。
それは、そこに人間の目を通した美しさの感覚が入っているからだろう。宝石のカットにも同じことが言える。

このポケットウオッチの時空を超えた旅はいつまで続くのだろうか。
僕の所にしばらく滞在するのか、あっという間にいなくなって誰かのもとに行ってしまうのか。
いずれにせよ、誰かに深く愛されるであろう。

願わくば永遠に時を刻み続けてほしい、Eros & Psyche 共に。



2005.07.28 T.Kuroiwa